2009年7月31日金曜日

映画トロンのプロモーションARG:Flynn Lives③まとめ&考察

映画 Tron LegacyのプロモーションARG、
"FlYNN LIVES"
について、
ちょっくら考えてみました。

定量的なとこがなんも分からんので、
完全にただの感想ですが、
以下参考までに。

FLYNN'S LIVESの結果


そもそも今回のプロモーションにARGを採用した理由は
以下の2つに当たると思います。
 
 ①ファン達へより満足度の高い経験価値を提供したかった
 (経験価値創出者としてのディズニーブランドの強化)
 ②ネットとリアルでトロン映画の情報を加速度的にひろめたかった


②に関しては、
毎回言われるが如く定量データがさっぱり出てこないので、
その是非は中々問えないのですが、
(映画プロモーションとかだと興行収入とかで判断されますが、
再現性が無いのでなんとも言えません)

①に関しては、
今回は明確に

「成功」

と言える様な気がします。


なぜ?


単純に、参加者の書いたブログエントリーの内容が感動と興奮に満ちあふれていたからです。
「そんな事かよ!!」
と思われるかも知れませんが、バイラルキャンペーンにおいては、
個人の書くブログエントリーの内容、
その評価、感想が全てと言っても過言じゃないと思います。

今までも数多くのARGが実施されてきましたが、
長期間でかつ内容もかなり複雑なものが多かったせいか、
ARG企画自体の粗探しでユーザーが盛り上がっていたり、
参加してみるものも楽しめず、途中で諦め不満足な結果に終わっていたり、
不満をこぼすブログエントリーが少なく無いものが数多くありました。

しかしトロンARG,FLYNN LIVESの場合、
まだARG終了から日が浅いという事もありますが、
非常に好評価のエントリーが多いという事が言えます。
(大体20個くらいのエントリーから判断してます)

http://www.firstshowing.net/2009/07/21/so-flynns-arcade-exists-new-viral-game-for-tron/
例えば上記サイトでは、
リードユーザー達がコメント欄でコミュニケーションをとりあっているわけですが、
このパズルを解いて行くスピード感、
そして次のイベントへの期待感が増幅して行く様が手に取る様に感じられます。

又、
実際にスカベンジャーハントに参加し、
FLYNN'S ARCADEで80年代のアーケードゲームを楽しみ、
さらに実寸大のライトサイクルのお披露目にも居合わせた人が興奮の余り書き込んだコメントからも、その喜びと興奮が感じられます。
(以下実際に書き込まれたコメント)


FLYNN LIVES!!! We were there at 1st and J… Where we were instructed to search for codes which were hidden around the Gas Lamp Quarter of San Diego with a supplied “Black Light” to reveal the coordinates of a special TRON event. The group of eight of us were able to quickly solve the puzzle and discovered, to our amazement, FLYNN’S ARCADE! When we entered the secret arcade, we found that it was an exact replica of the one featured in the special screening at Comic-Con from earlier that day! We all played the classic arcade games listening to cool tunes from the eighties until a certain song by Journey cued us to go the classic TRON arcade game… Next, the secret door behind the TRON game was revealed and we were led into the secret back room where we found an actual Tron Lightcycle from the new TRON movie… we were completely wowed and delighted!!! We left after given t-shirts and posters with hidden messaged to the countdown website… (clue: “slash derez”) …the actor who plays the son of Flynn (Garrett Hedlund) also showed up to say hi and we even saw Peter Petrelli (Milo Ventimiglia) from Hero’s come by to see what was going on. Totally a cool night…Disney went way over the top with this!

veganboy on Jul 24, 2009



時間のある時に日本語訳ものせようと思いますが、
コメントの中のビックリマークの量だったり、
又最後の一行、

"Totally a cool night…Disney went way over the top with this!"
(最高にいかした夜だった。完璧にやらかしてくれたよディズニーは!)


からも、
参加者に対して期待以上の経験価値が提供出来ている事が感じられます。


これこそ、
経験価値のパイオニアであるディズニーの仕事、
という感じが個人的にはします。
もちろん、
ディズニー映画とARGとの親和性を敏感に感じ取り、
ここまで満足度の高い企画を考えた42entertainmentもさすが、といった感じですが。


ストーリーの無いARG



このARG、
特徴の1つに、
「ストーリーの欠如」があげられます。
これ実は結構レアケースで、
大抵のARGにはストーリーがあり、
いわゆるロールプレイングゲームをやる感じで企画が進んで行くのが普通です。

人によっては、
「ARGにはストーリーが不可欠。何故ならARGとは新たなストーリーテリングの手法だから」
とまで言う人もいるのですが、
FLYNN LIVESをARGとしてだけ考えると、
(トロンという世界観、ストーリーを考えない)
これは明らかに「ストーリーの無いARG」であると言えます。

FLYNN LIVESは、ストーリーが無くても十分機能した特異な例だと思います。
なんでなんだろーとちょっと考えてみました。

短期間完結型ARGには、ストーリーはマストじゃない



①テンポ
②次のフラグを立たせるまでのモチベーション

の2つがゲーム進行の鍵となるのは感覚的に分かって頂けるでしょう。
ストーリーがあれば、
そのストーリーの続きが知りたいという動機で小難しいパズルを解いたりリアルミッションに参加してくれたり、
参加せずともまとめサイトの更新情報をチェックしてくれたりします。
もちろんパズル解読やリアルミッション参加へは違う動機が起因してたりするとも思うんですが、結局そこにストーリー、あるいは他の強い動機(懸賞金等)が無いと、
普通やられる長期間ARGは参加者を惹き付け続けられない。
結果過疎化が深刻化し、企画倒れした例も少なくありません。
(日本で実施された「あんたがた」等のイベントは、ここではARGと認識していません)

しかしFLYNN LIVESは、
約三日間という短期間で
ミッション1:GIFアニメデータ解読(難易度高)
ミッション2:カウントダウンの謎解明(難易度易)
ミッション3:Comic-conでのスカベンジャーハント
フィナーレ:FLYNN'S ARCADEオープン、ライトサイクルお披露目

と、テンポよく企画が進み、
ストーリーがなくてもプレイヤー達の参加意欲を下げる事なく進める事に成功しています。
又結果的には、
プレイヤー達が謎に立ち向かって行く様子、コメントでのやり取り等が、
何かストーリーめいた面白いイベントになっていた様にも感じます。

又ミッション、要はプレイヤー達のTODOが明快だった為に、
プレイヤーに対してもwatchしてる側に対しても、
進行過程で混乱を招かなかった事が大きな勝因になっているとも考えられます。
つまり、複雑なストーリーを無理矢理組み込む事で生じる
①行き過ぎた推測
②思考の分散化(ストーリー追求orミッション達成かでプレイヤー行動が散ってしまう)
を未然に防止し、進行スピードを保証していたのではないでしょうか。

要するに、
下手な混乱を招くぐらいなら無理にストーリーを作らなくても良い。
ストーリーが無いと駄目だ、という元々帰納法的に出ていた結論が、
また今回の事例を通して覆った様な気がしています。


日本での応用可能性


これなら日本人でもやってくれるイメージがやや湧きます。
というのも、
①短期間完結型で、面倒くさくない
②ブログは信頼されていて、特に有名ブロガーともなればその信頼度は極大
③TODOが明快。何したらいいか分かるから、やっても良いかなって気になる。
④知ってるコンテンツだとなおさら良い。

とにかく古典的ARGは、
得体が知れなくて「恐い」

TINAG(this is not a game)とか言ってるけど、
リアリティーとフィクションがあまりにも曖昧になりすぎてると、
一部のネットギーク以外は恐くて近寄れない。
twitterですら恐いとか思っちゃう国民だから、
いわんやARGをやってなもんで、ハードルの高き事山のごとし。

この「恐い」を解消してあげられる要素は、
今の段階では
①有名タイトルとのコラボ
(アニメだと、こちかめ、ドラえもん、エヴァ、等)
②ゲームである事の明示
どうぞ安心してゲームに参加してね!というメッセージ

がコア

で、

「なんかよく分からない」を解消する為の施策もちゃんと盛り込んであげる事が必要だろうなぁと、思います。


最後に参加動機ですが、
ARG自体がかなり非日常的経験サービスなので、
何かしらイベント等とコラボして、
ターゲット層が「イベントモード」になっているタイミングを狙って行くと成功率が高まると思います。

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